藤井貞和・著 講談社学術文庫 1211. 1996年
とても面白かった。何度も読んだ。
詩人の「ねじめ正一」は、長島監督と著者を「この世に舞い降りた天使」と形容したらしい。是非ともロマンスグレーのナイス・シニアであることを願おう。いえ、どっちでも良いんですけどね、この方の御著書はとても面白いんです。
源氏物語を考察する際の「着眼点」の見つけ方や、「読み方」を教えてくれる。目から鱗で、『「読む」とはこう云う事だったのか』と云う感じだ。論旨の展開も丁寧で、分かり易い。
切り離された「部分」へ狭視野的に注目するのではなく、「全体」の中で問題を位置付け、アプローチ方法も複数採っていらっしゃる。そのため、論旨展開に全く無理が感じられず、あれよあれよと云う間に結論まで持っていかれる。
最近の本は問題設定も論旨展開も強引、拙速、我田引水、牽強付会に感じられる。モダンだかポスト・モダンだかスキゾ・アナリーズだか知らないが、誠実さが感じられず、大変不快に感じることもしばしば、「源氏ブーム」の弊害か。門外漢の毛色の変わった本も面白いけど、そればかりだとちょっとね。
この点で、藤井先生の御著書は、論旨展開も言葉遣いも大変丁寧に感じられて、すごいと感じた。
あと、脚注が同一ページ内に載っているのもポイント高い!
とても面白いだけに、我が身の浅学が口惜しい。もっと勉強して、もう一度、二度、三度と読みたい一冊。是非。
30th/7/2001
藤井貞和・著 講談社学術文庫 1315. 1998年
これもとても面白かった。
大変やさしい言葉遣いで、極普通のことが書いてある。よくある「初心者の為の勉強法」や、「ヒヨッコ研究者の為の問題の見つけ方、アプローチ方法」などでは全くなく、「日本古典文学」との付き合い方が書いてある感じだ。
読解方法や研究方法ではなく、「鑑賞方法」と云っても良いかもしれない。「鑑賞のための読み」と云うか。因みに、方法と云っても、「何が正解」と云うことが書いてあるわけではありません。
上手く云えないけど、「この本を読むと、古典が読みたくなる」。大変優れた「読書ノススメ」だと思う。
「腰を据えて、勉強していこうと思っている方」、「文学部日本文学科で日本古典文学を専攻する方」向けの「しおり」かな。
30th/7/2001