三田村雅子 -MITAMURA, Masako

源氏物語 ―物語空間を読む

三田村雅子・著 ちくま新書 094. 1997年

著者は物語文学、日記文学、「枕草子」を専攻する(2000年5月現在)フェリス女学院大学教授。身体論、風景論、メディア論の立場から柔軟に捉える新しい研究方法を提起しており、明晰な論理展開には定評がある方だそうな。

サブタイトルが物語空間を読むとなっている通り、言語化されてはいるが、意味付けをされていない部分に細やかな注意を向けているらしい。病、悩み、妊娠、ぼけ、垣間見、手触り、顔の光などの「身体」「花々と木々の体系を読み取り、全体の読みに繋げて行く事」の2点を本書では目標とされたとある。

「あー、なるほど!」と云うことが沢山あって、大変興味深い。例えば、北山での「わらは病み」治療は、夜間の聖による加持に加えて、翌日の昼間に西方の(明石方面)で「未来」、東方(京方面)で「過去」、紫上垣間見で「現在」を見る事による段階的な治療、客観化の過程であり、最後の晩の宵闇の時間が聖(仏前の名香)・俗(空焚物)両極に引き裂かれたにおいによって罪を暗示する時間であり、、その夜は読経を伴奏にした山寺の雨、風、滝の音などの水音を聞く事による一段と深い気付きの時間であった事を示すそうだ。

つまり、北山で罪を自覚した事で、元服したにもかかわらず少年時代から引いてきた藤壺思慕と言う混迷から抜け出す手掛かりを得たと言う訳だ。ココで見つけた紫上は生涯の伴侶になったし。実はよく分からん。すまん。

この本はとても面白かったです。おすすめです。「何か面白い源氏本ない?」と云われたら、私はこれをすすめます。でも私はこの人嫌いだわ。

9th/May/2000, 30th/July/2001