田辺聖子 -TANABE, Seiko

新源氏物語 [1-5巻]

新潮社 1978-1979

田辺源氏。桐壺から幻まで。光源氏の一生。

霧ふかき宇治の恋 [上・下]

新潮社 1990

新源氏物語の続編。宇治十帖。光源氏の死後、その子孫の物語。

源氏紙風船

新潮文庫 1985
単行本1981新潮社

新・源氏物語脱稿後に書かれた『源氏物語』エッセイ。

『新・源氏物語』執筆時の苦労話が中心。後書きの気配が濃厚。内容は、決してつまらない訳ではない。訳ではないが、古すぎる。20年前なら感覚で分かるかもしれないが、今では頭でしか分からない。笑う所が分かっても笑えないとも言える。だってジュリー(「沢田けんじ」のこと)だぜ、今じゃそれだけで冗談だよ。

それでも、学者先生について原典を熟読された方の著されたものだから、田辺源氏(新・源氏物語霧深き宇治の恋)の息抜きとしてよろしかろう。訳者御自身が書かれている訳だから、「なるほどね」と思うところも沢山あるのだ。源氏物語の粗筋をフォローされている方ならば、「そう、そう」と膝も打とうというものだ。

私本・源氏物語

文春文庫 1985
単行本1980実業之日本社

これは是非読んで!読めば分かるから!

最初は嫌だったんですよ。バカにされている感じがしてね。でも「源氏は暫くいいや」って思った時に半義務的に読んでみたら、これが面白いの!好きになれない人もいると思うよー。でも私は好きだな。繰り返し読むものじゃないかもしれないけれども、気が向いたらね、読んでみて。一時間位で読めると思います。

でもね、田辺氏が「源氏物語を訳していると、こう云うものが無性に書きたくなる」と云うような事を仰っているのね。で、私なんかが云うとおこがましいんだけど、確かにね、ある程度は源氏物語の堅い面を知っている方が楽しめると思います。例えば、源氏の本文には食事のシーンって殆どないでしょう。この本では、光源氏が食う食う!そういうギャップも私は面白かった。これはこれで楽しめる本だと思いますが、出来れば「あさきゆめみし」だけじゃなくて、現代語訳で十分ですから、活字で源氏を読んでからの方がイイと思います。

因みに、この光源氏は関西弁だ。いや、京都弁か。

『源氏物語』の男たち

講談社文庫 1993
単行本1990岩波書店

『源氏物語』男の世界(同著)とセットのような本。こちらがパートT。光源氏夕霧の二人の事が書いてある。各100ページくらいで、原文もちょこちょこ出ている。

女性登場人物の事は、色々と書かれているのを見るのですが、男性の事を書かれているのは、あまり見かけないので、面白かった。

『源氏物語』男の世界

講談社文庫 1996
単行本1991岩波書店

『源氏物語』の男たちのパートU。桐壷院頭中朱雀院「点景の男たち」の事が書かれている。薫は100ページくらい書かれているが、他三人はちょっとページ数が少ない、残念だ。「点景の男たち」は、印象の強い脇役たちのことです。

私は頭中のファンなので、もっとたくさん書いて欲しかった。

源氏たまゆら

田辺聖子・著 岡田嘉夫・絵 講談社文庫 1995年(単行本1991年)

源氏物語の骨子を踏まえて、全く新たに物語る歴史王朝物語。第1章は自称「おれ」なる、ハード・ボイルドな光源氏が語る女性遍歴物語。第2章は、宇治の姫君達を廻る薫の一人称。

本文と絵(カラー)が一体に構成された紙面で、絵巻物に文字が流れている様で美しい本。ハード・カバーが欲しい。

本書は、源氏物語五十四帖をカバーするにはあまりに短いので、どうした所で、細部に難が出るのも致し方ない。例えば源氏・薫の一人語りだから、他の女人の個性が弱くなる。でもそんなことを言うのは野暮。短いんだから。

短歌での遣り取りなどは普通の会話に直されているし、原文の冗談などが読んでいて笑える様に書いてあったりする。他にも、「六条御息所」を「六条夫人」、「葵上」を「葵」とするなど、とにかく読みやすくて面白い。。暗いといわれる宇治十帖辺りも、決して暗くは書かれていない。 その一方で、例えば源氏の孤独が浮び上がるように配慮されており、独立した作品としてよく出来ている。

「源氏物語に興味はあるがとっつきにくい」と言う向きには、「あさきゆめみし」(大和和紀)か、本書を奨める。短いし。