駒尺善美 -KOMASYAKU, Yoshimi

紫式部のメッセージ 朝日選書 422

駒尺善美・著 朝日新聞社 1991年

著者は、近代日本文学、女性学専攻のフェミニスト。出版時67歳。何故年齢の事など書くかと言うと、著者がかなり偏屈に感じられるからだ。柔軟性が無さそうと言うか。この御年ならば大家であろうし、自負、矜持の現れだろうか。

例えば、光源氏は強姦者で、源氏物語の主題は男根主義的父権社会・結婚制度に虐げられた女性の啓蒙であるとする。女性解放も結婚拒否も大いに結構だが、その方面から強気に書いてくるには、「少々源氏物語について勉強不足では?」と思える所もある。

フェミニズムのことは全く知らないのだが、どんなに親しい人だろうが「この人はこうだ」と言い切るのは感心しない。まして1千年前の会った事もない人を「フェミニストだった」と言い切る事は可能なのだろうか?「可能だ」と言われてしまえばそれまでだが。

何れにせよ原文に則って論じており、確かに感心するところもあるし、考えとして面白いのだが、あくまでも現代思想の遊びと云う気がした。

ただ、本書を著した熱意のようなものが感じられ、面白い一冊だ。源氏本としては目新しかったし。